お祭り騒ぎ
では、次に西国の領主の皆様の桟敷に参ります。
こちらの桟敷、地域で集めたかと思いきや、
なんとざびー教という宗教の教徒の方の桟敷だそうです。
あまり詳しくありませんが不安です……。
うう、では覚悟を決めて参りましょう。
○ ○ ○
おお!
ザビー様のご加護ですよ、チェスト!!
おやっさんの慧眼、さすがっす!!
…司会のお嬢さんではござらんか。
(明らかにドン引きしてるよー。
しかもワシを見てビクッて、完全に怯えてるし!)
※括弧内は筆記による注記
は、はい、
と申します。
何をしているのですか宗茂!
……おや、確か司会の。
なんじゃ、お客さんか?
呑んどるかー!?
いえ、あの、今日は桟敷席の皆様の様子を見て来るよう、
上様から言付かっておりまして。
ああ!
おやっさん!
痛いって!!
宗茂!
お前の顔がいかつい上に図体がでかいせいで、
さんが困っているでしょう!
持ち込んだザビー水を下々の者に売って来なさい!
し、しかし……
(ええー!?
ドン引きさせてるの、宗麟様のザビー様関連の発言でしょう!?)
つべこべ言わずに行くのですっ!!
おお、さすが宗茂どん。
しっかり着地しおったわ。
さて、場が落ち着きましたね。
何か御用ですか?
あ、はい、上様から質問を預かっておりますので、
お答えいただければと思います。
Q1:本日お越しいただいた一番の目的は?
A1:運営資金の獲得です!
バンビやチェストも信仰心篤い信者ですから、
先ほどから連勝しておりますよ!
Q2:楽しんでいただけていますか?
A2:賭博は好ましくありませんが、
今回得たお金でザビーランドが建てられれば、
ザビー様もお喜びくださるかと。
Q3:本日の目標は?
A3:ザビーランドの建設費用の他、
新アトラクションの開発の費用も欲しいですね。
Q4:この祭に一つ手を加えるなら、どのような部分ですか?
A4:ザビー様の愛を伝えられる場を用意してもらいたいです。
……ありがとうございます。
では、最後に松永から託された質問です。
Q5:ザビー教の愛とやらを是非証明してくれたまえ。
A5:最初は愛を疑うのも仕方のないこと。
しかし、ここでザビー様のご加護があることを証明し、
一挙に信者を大量獲得です!
そしてザビー様にもう一度……!
あの、他の皆様は何かございませんか?
何もなか。
酒が美味いのはありがたいがの。
晴様が早く見つかって欲しいです。
おやっさん、だから痛いって!!
……ありがとうございました。
○ ○ ○
なんというか、南蛮の宗教というのは恐ろしいものですね。
大友様以外はあまり信仰しているようには……
いえ、なんでもありません。
立花様が売り子をされているザビー水とはどういう物なんでしょうね?
……試さない方がよろしいのですね、分かりました。
あと、あれ、本物の鹿なんですね。
ちょっと疑ってましたが、可愛い鹿さんでした。
ザビー教の皆様は信仰心を持って、この祭に参加されている様子です!
宗麟様以外に上位にどれだけ食い込めるか!?
果たしてザビー教のご加護やいかに!?
が義輝の桟敷に戻ってくると、マリアが戻っていた。
「おかえりなさーい」
彼女は結構気遣いをする人らしいというのはうっすら分かったが、
いまいちよく分からない人である。
「妾はやっぱり、こちらの席の方が面白いわ。
長政ったら堅苦しいことばかり言うのだもの」
「見たところ浅井の夫婦は仲睦まじく……という訳でもなさそうだが。
聞いた話と少し違うようだな」
「さあ?
あら、銚子が空ね」
「先ほど用意するよう申し付けておいたよ」
「そう、気が利くわね」
マリアはそう言って空の銚子を隅にまとめた。
かなりの本数が林立しているが、
この桟敷の誰一人顔色に変化は無い。
彼女が義輝にべったりなので、
自然と久秀に酌をする役目が
に回ってくる。
彼の杯が空だったので、
は一休みする間もなく彼の隣に座って酒を注いだ。
「……卿にしては気がきくね」
そう言われた。
忘れたら忘れたで文句を言うので、
単に何か言いたいだけなのだろう。
「お褒めに預かり恐縮です」と
も口だけで返しておいた。
「回転盤の整備と、中間発表を行います」
1位 徳川家康 様
本多忠勝復活!ここに来ての勝率上昇!
2位 大友宗麟 様
連勝が止まらないものの、一度の賭け金が小額やも……?
3位 上杉謙信 様
一点賭けに入ってからの勝率が高い!
この一言添えてある文は、もしや久秀が書いたのだろうか?
と思ったが、口には出さずにおいた。
知らないほうが良い、ということもあるだろう。
「それでは暫しご歓談くださいませ」
はふう、とため息をついて席についた。
毎回白湯を頼むので、今回は既に用意されていた。
「ご苦労様。
あの役、妾がやっても良かったのよ?」
「はははは!
客人に仕事は頼まぬよ!」
義輝は豪快に笑った。
そうしてまた二人の会話に戻ってしまった。
残されるのは
と久秀の二人である。
風魔は姿を消しているが、
居ても無言を貫くので意味は無いかもしれない。
その久秀が立ち上がって
を手招きしている。
先ほど酷い目にあったところなのでその動きを警戒したい所だが、
反抗したと取られても面倒なので、
はしぶしぶ久秀の近くに移動した。
「何でしょうか?」
「卿にお知らせだ。
急ぎで用意させたその衣装だが、
どうにも色合いが気に食わなくてね」
「いえ、私には十分すぎる立派な物をお借りしておりますが」
「卿の意見などどうでも良いのだよ。
適当に見繕うように言っていたものが届いたから、
お色直しにしようと思うのだが」
久秀が楽しそうににやにや笑う。
彼の性格の悪さで並ぶ人はどこにも居ないだろう。
「……私の意見はどうでも良いのでしたよね?」
「理解が早くて助かる。
部屋も用意させてあるから心配はいらない」
うへえ、と
は心の中でげっそりした。
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