お祭り騒ぎ


続いて、加賀の前田様の桟敷に向かいます。
本日は前田慶次様のほか、
保護者の前田利家様とまつ様がお見えになりました。

前田の皆様はお祭りが好きな賑やかな方々と伺っております。
先ほどの織田陣営とは違い、
盛り上がっていただけているのではないでしょうか?

こちらは生きて帰れそうな予感がします。
楽しみですね。

○ ○ ○

これはこれは、様に風魔様。
ささ、おかけになってくださいませ。

あ、ありがとうございます。

まつ、某これだけでは腹が……

犬千代様、そう仰ると思っておむすびを用意しておりますよ。

おお、すまんな!

あ~~~~~!!!

どうした、慶次!?

また負けた……。
どうも賭けは弱いんだよなあ。

勝っても負けても、程ほどのところでやめるのですよ。

分かってるよ。
おっと、ようこそ前田の桟敷へ!

ありがとうございます。
本日はお越しくださいましてありがとうございます。
上様からいくつか質問を預かっておりますので、
どうぞご意見をお聞かせください。

おう、どんどん聞いてくれ!
まつ姉ちゃん、何かお菓子とかある?

まつ特製のぼた餅です。
様も、風魔様も召し上がってくださいませ。

まつ、某も!

ありがとうございます。
ですが、すみません、先に質問に入らせて頂きます。

Q1:本日お越しいただいた一番の目的は?

A1:うーん、祭って聞いたから。
   やっぱり楽しいだろ?

Q2:楽しんでいただけていますか?

A2:勿論!
   賑やかなのはやっぱり良いねえ!

Q3:本日の目標は?

A3:楽しめたら何でも良いんじゃないかな。
   利やまつ姉ちゃんの日ごろの感謝も込めて、
   ちょっと旅行に来たみたいなもんだし。

   慶次……!

   ありがとうな、慶次!

Q4:この祭に一つ手を加えるなら、どのような部分ですか?

A4:なんか祭は祭でも、野郎ばっかっていうか……
   女も子どもも皆楽しめるような祭が良いなあ。

確かに下のお席も男性ばかりのような。
ありがとうございます。
では、最後に松永から託された質問です。

Q5:旧友との再会を楽しんでくれたまえ。
   
あれ、質問ではないですね。

A5:……。

えー…と。

A5:うん、まあ秀吉の周りにあんなに友達がいるなら、
   俺も安心だよ。

お、お友達なのですね。

友達だった、っていう方が正しいけどな。
誰だって大喧嘩くらいするだろ?

……申し訳ありません。
そんな裏のある言葉とは思いいたらず。

ささ、お茶も入りましたから餅をどうぞ。
風魔様もお座りになられませ。

○ ○ ○

まつ様特製のぼた餅、美味しかったですね!
ほっとする味です。
風魔様、口元にあんこがついてますよ。
包んでもらったぼた餅は後でまた食べましょう。
上様や松永様はあまり食べなさそうですし。

えーと、
前田家の新領主の慶次様は賭け事が苦手とぼやいておられましたが、
それでも楽しんでこそ祭!
と終始笑顔でした。
運のものではございますが、
応援したくなるお人柄の皆様でした!







「義輝、妾は12が良いわ」

「余は25へ100賭けよう」

将軍の桟敷に戻ってくると、
そこには見慣れぬ美女が座っていた。
ぴったりと義輝に体を密着させ、賭けに興じている。
なんとも居場所に困る光景である。

「……ええと」

「まあ、座りたまえ。
 彼女は将軍の友人である京極マリアだよ。
 あちらの桟敷にいたはずなのだがね」

隅で寛いでいる久秀がすぐ隣の桟敷を指差した。
なんだか微妙に距離を取る夫婦らしき姿が見える。
確か浅井長政と、その妻市だろう。
市は先ほど会ったばかりの信長の妹ということだが、
そんなに禍々しい雰囲気ではない。

「出張ご苦労。
 さて、どんな回答が得られたか」

の横に立っていた小太郎が久秀に帳面を渡した。
にぃ、と久秀が邪悪な笑みに顔を歪める。

「ふむ、まあこんなものか」

ぺらぺらと紙をめくっているが、
彼はきっちり読んでいるのだろうか。
の苦労の結晶である。
それに、命からがら帰還した部下にかける労いの言葉は無いのか、
と思ったが口には出さなかった。

「――…卿の私に対する評価がよく分かるな。
 ぼた餅を取ったりしないから、後でゆっくり味わうと良い」

どうやら魔王軍との会話以外の関係の全くない部分まで、
小太郎は律儀に書き残したらしい。
睨みつけてみたが、意に介する様子は無い。
には武力も権力も無いので仕方が無い。

「中間発表の頃合だ。
 これを読み上げてくれたまえ」

久秀からは意外にも詰るような言葉は無かった。
やれ物覚えが悪いだの、頭の中はおがくずかだの、
目は節穴かと一月罵られたである。
多少驚いた。
が、それを顔にだすとまたひとくさり言われるので、
「はい」と大人しく紙を受け取った。

「えー、盛り上がっているところ申し訳ありません。
 中間発表を行います。
 中間発表では上位の皆様をご紹介します」

 1位 山中鹿之助 様
    おつきの鹿(?)の野生(?)の勘が冴え渡る!

 2位 織田信長 様
    脅威の運!適当に数字を選んでいるとしか思えない!

 3位 徳川家康 様
    本多忠勝の鋭い視線と分析が勝利の秘訣!

「尚、不正が発覚しましたのでご報告いたします。
 長曾我部元親様、毛利元就様。
 お二方は鶴姫様の能力を悪用しておりましたので、
 この中間発表までの勝ち分を没収、
 鶴姫様には運営側へ回っていただくこととなりました。
 ご了承ください」

たしか、鶴姫は先見の能力があるという話だった。
久秀は馬鹿にしていたがわざわざ不正と断じたあたり、
馬鹿にできないほどの的中率だったのだろう。

「ここで、一度回転盤の整備を行います。
 暫しご歓談くださいませ」

はぺこりと頭を下げた。
この役目、久秀がすれば運営側の不正を疑われかねないだろう。
そうは思ったものの、当然ながら口に出せる訳が無かった。